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解 説 ヒマラヤ保全協会の4つの事業
1.森林保全事業
2.生計向上事業
3.「主体」と「環境」とからなる地域の基本構造をとらえる 私たちの活動地域の村々では、どこへいっても住民がくらす集落が中心にあり、その周辺に森林がひろがっています。これが地域元来の基本的な姿です(図3-A)。 4.「主体-環境系」を再構築することが住民とともに自然をまもることである
Q「植林する以前の地域住民の薪炭材の供給はどうだったのでしょうか?」 A「自然林を伐採して供給していました。集落のちかくから伐採していったので、森林は次第に後退していきました」
Q「住民の生計向上の事業がはじまる前は、住民の収入源の確保はどうでしたか?」 A「農業主体の自給自足の生活をおこなっていたため、現金収入はありませんでした」
Q「住民参加のシステム・かんがえ方が地域の意志決定制度、文化、風習あるいは政治と相反することにならないでしょうか?」 A「あくまでも地元の文化を尊重しながら住民参加のプロセスをすすめていかなければなりません。それにはとても時間がかかります。ヒマラヤ保全協会の場合は、まず、森林再生・環境保全という側面から住民参加型のアプローチをし、そのご村落活性化の問題へとシフトしていきます。その方が、住民からの合意を得やすいです。村落活性化の問題に入ったら、村落委員会が中核となって、それを住民がささえるという仕組みづくりをおこないます。こういった流れを踏みながら、住民参加のシステムを成熟させてきました」
Q「売れるものばかりを大量に生産するようになった場合、生物多様性に悪影響がおよぶ可能性があるとおもいます。たとえば、ミカンの木ばかりを植えれば、他の木々は減ってしまいます。多様性を維持しつつ経済的収益も確保しつづけるためにはどうすればよいのでしょうか?」 A「森林には、その地域に元々存在する森林と、住民の生活に役立つ経済性をかんがえた森林の二種類があり、前者は原生林(自然林)と呼ばれますが、後者は『生活林』と呼ぶことができます。ヒマラヤ保全協会は、ヒマラヤ本来の自然をまもるために原生林(自然林)の保全活動をおこなう一方で、住民の生活圏にちかいところには『生活林』をつくっています。原生林は、地元では『鎮守の森』という位置づけで大切にされ、手をつけず、もし外来種が進入してきたら積極的に駆除しています。一方、『生活林』では、外来種を導入することもあり、住民の現金収入につながるミカンなどの果樹、家畜の餌になる飼料木なども積極的にそだてています。
一種の形容矛盾ですが、このような『生活林』は『人工的な自然』であるといえます。このように、原生林と『生活林』、本来の自然と『人工的な自然』とを明確に区別し、地域のどこかに一線を引き、それぞれに重要な意味を見いだすことが、生物多様性を維持しつつ経済性も確保するための重要なポイントになります」 Q「長期的に持続的な活動をするためには、地域の若い人の力が重要になるとおもいます。また、住民との話し合い、教育、女性の参画のためのアプローチはどのようにされていますか?」 A「若い人の参加については、『学校林』という区域をもうけて学校の生徒たちに植林・森林保全活動に積極的に参加してもらっています。また、各地に『マザーグループ』という女性組織をもうけて女性の参画もうながしています。植林などの活動への参加にあたっては労賃は一切支払わず、あくまでも自主性・主体性を重視し、自分たちの仕事としておこなうようにしています」
Q「事業をおこなっている村にはその村の村人による政治があるとおもいます。住民参加型の事業における外部と内部の関わりについてはどのようにおかんがえですか?」 A「国際協力事業で外部者が村落に入る場合、まず、私たちは自然環境の保全活動から入っていき、村落開発という観点はあとまわしにします。自然環境の保全活動は政治的色彩が弱いため、村の政治にかかわらず住民の合意を形成しやすいです。この活動を通して、まわりの自然環境や自然資源の重要性や、近隣の村々の現状などを住民に再認識してもらうことができ、住民に対してあらたな視点を提供することができるようになります。このような活動がすすんできたのちに、その村の開発といった政治的なことが関係する議論を村人たちとするようにします。
このように、村の外側から入り、次第に中に入り込んでいくという方法をとれば、最初から村の政治にかかわるよりもスムーズに事業がすすみます。あくまでも、村や地域の主体は、そこでくらしている住民であり外部者ではないのですから、住民が主体であることを認識し、まず、集落の周辺(自然環境)から外部者が協力し、しだいに中に入って住民と一体になって活動していくというプロセスを踏むのがよいでしょう」 Q「農業用地と森林再生地との競合があると思いますが、共存のために何が重要ですか?」 A「家畜が重要です。家畜は、再生された森林から飼料をを得、農耕地に肥料(糞)を供給します。また、家畜は耕作を手伝うので、よい飼料が供給されると家畜が元気になり、農業生産性も高まります」
Q「住民の周辺自然環境に対する意識変化として、具体的な例を挙げてください」 A「自然環境をよくすることは、自分たちの暮らしをよくすることになるということに気がついたことがあります」
Q「植林などの保全活動のためのインセンティブとして生計向上プロジェクトをおこなうと思いますが、どの方法がもっとも有効ですか?アグロフォレストリー/収入源となる樹種そのものの植林/全く対称資源から離れた畜産、など」 A「一般論としては何もいえません。地域によりことなります。その地域のフィールドワークをしてニーズをつかむことが必要です。そのうえで、地元の森林資源・自然資源をいかに有効に活用するかという観点から方法を選択します。外からの技術は、地元のポテンシャルをさらに開発していくために役立つものを採用します」
Q「ネパール山村について、スライドの中で30年前の森林との比較の絵がありましたが、以前、薪のために切っていたのを今現在はどのように補っているのですか? 今も遠くまで取りに行っているのでしょうか?」 A「集落の周辺に再生した森林の木を、枝打ちを中心にして計画的に利用しています。したがって、遠くまで取りに行ってはいません。住民による森林管理・森林経営を実施しています」
Q「ヒマラヤでの植林をしていくにあたって、職隣地が農地であった場合に住民からの反対はなかったのですか? 植林した木が幼木のときに薪炭材として伐採されたことはなかったのですか? 何年もかかる事業への住民の理解について詳しく教えてください」 A「農地には植林はしません。ただし、放棄された農地には地主の許可を得て植林をします。植えた木が幼木の時は伐採しないルールをつくりました。住民の理解を得るために、現状把握・計画立案の段階から住民に参加してもらっています。その過程で、参加型手法としてのKJ法が役立ちました」
Q「対象住民は経済的に貧しい人が多いと思いますが、森林保全活動が重要だと知っていても、なかなか収入や恩恵を受けるまで時間がかかり、主体的・自主的に参加する人は少ないと思います。貴プロジェクトにおいて、自然環境保全活動に住民を引きつける方策、手法はどう工夫されたのでしょうか?」 A「いきなり育苗・植林を始めることはしませんでした。最初は、遠くの非常に豊かな森林を、その破壊が進まないようにして計画的に利用することから始めました。薪などの運搬のためにはロープラインをつくりました。そして次第に、森林保全活動について住民の理解を得、育苗・植林へと徐々に発展させていきました」
Q「村落の周囲の森林が再生したとおっしゃっていましたが、村民が今でも主な燃料を薪炭としているなら、再び過剰な伐採が起きることはないのでしょうか。そのあたりのフォローはどうしているのですか?」 A「村に、森林委員会を組織し、苗畑管理人を養成し、再生された森林を計画的に利用するルールをつくっています。住民による森林管理・森林経営を実現し、森林破壊がもうすすまないようにしました」
Q「Since your project has already cross 32 years, how about the young people involvement in your projectr activities?」 A「学校の生徒にも育苗・植林に参加してもらっています。学校専用の植林地もつくっています。子供たちは木々の生長をとても楽しみにしています」
Q「1500haにわたる植林の際、植林対象種はどのように決められたのか教えてください」 A「樹種選択は基本的には地元にある木を選択します。第一に、土壌流出・防災に役立つ木、第二に、薪・家畜飼料・材木など住民の生活に直接役立つ木、第三に、果樹・薬木など、換金(収入向上)に役立つ木を選択します。ハンノキは日陰になることが多い谷沿に、マツは日向の尾根沿いにうえ、それぞれ、第一の目的以外に、第二の薪や材木としても利用されます」
Q「植林後の苗木のモニタリングはどのようにおこなったのか、途中間伐などを行ったのですか?」 A「植林後の苗木のモニタリングは、森林委員や苗畑管理人が毎週、現地協力団体のスタッフが月1回おこないました。木が生長したのちは間伐も必要に応じておこないました」
Q「植林をするとき、住民へのインセンティブはありますか(植林に参加したらお金がもらえるかなど)?」 A「植林は、あくまでも住民と地域の発展のためにおこなうことを認識してもらい、植林参加者にお金は一銭も支払いませんでした」
Q「植林地は私有地なのですか、村の共有地なのですか?」 A「植林地は村の共有地と、地主から植林許可を得た私有地です」
Q「植林木を住民は薪などに利用(伐採)できるのですか?」 A「植林して成長した木は、村の計画の元でルールにのっとって、住民が利用(伐採)できます」
Q「ミツマタはどこに売るのですか。売ったお金の管理は誰がするのですか。住民には還元されるのですか。収益が上がったらそのお金をまた植林活動にまわすのですか?」 A「ミツマタは、首都にある製紙会社に販売します。販売による収益は村が管理し、育苗や森林保全活動、そのた村の発展のためにつかわれます」
Q「何村くらいを対象にプロジェクトを行っているのですか。1村の人口はどれくらいですか?」 A「現在、約40ヵ村を対象にしています。1ヵ村の人口は平均2900人です」
Q「村落内に植林活動をする組織化はしましたか?」 A「植林活動をするために、村に森林委員会を組織し、苗畑管理人を養成しました」
Q「30年以上も活動している資金源は何ですか?」 A「資金源は、第一に、ヒマラヤ保全協会の会員がおさめる会費・寄付金、第二に一般からの寄付金、第三に、助成団体からの助成金をあてています」
Q「苗木を現地へ植樹する際、段階的にどのような植樹の方法を現地で行っているのですか?」 A「ハンノキやマツなど成長が早く、根付きがよい樹種を荒廃地に植えることからはじめます。その後、飼料木や果樹なども植えていきます」
Q「今後、何か具体的な次の生計向上プロジェクトをお考えでしたら聞かせてください」 A「果樹の生産、製紙事業、織物事業にとりくんでいきますが、養蜂事業なども検討しています」
Q「KJ法とは具体的にどのような手法なのですか。川喜田二郎さんのイニシャルということでしたが、命名の意図は?」 A「KJ法とは創造的問題解決の方法であり、参加型開発手法としても知られています。川喜田二郎の方法ということで、イニシャルをとって簡略に『KJ法』と呼ばれるようになりました。当初はニックネームでした」
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